熱血、狂え。「12人のイカれたワークショップ」が爽快に怖かった感想

12人のイカれたワークショップ


見てきました!こ、怖かったー!!!!
これからどんな気持ちでエンタメ楽しんだらいいか分からないよーーーーー!!!!

きもちいいくらいタイトル通りの映画でした。
心の耐久度が低いときに景気づけで見ない方がいいのかとも思いつつ、
でも底知れないエネルギーを浴びたい人にはおすすめしてみたいです。
怖かったー!と思った部分に関しては全然怖くない人もいるんじゃないかと思います。
何かに真摯に向き合っているのなら当たり前のことなんでしょうね。
タイトルの「イカれた」の部分は「怒れた」とひっかけてます?
もちろん「イカれた」にひっかかる部分は相当出てくるんですがそうじゃなくて。
最後まで見ると「こういう映画撮ろうか」って発想からどうかしてると思います。
「そりゃあ有名なタイトルをもじってるんだからそうでしょうよ」となるんですが、
そこに隠れてる「怒れた」ことがこの映画の核心にあるんじゃないかと。
イカれて怒れたのは何に対してなのか、その先になにがあるのか、そんな映画でした。


まだ公開中なので作中でなにが起こるかはできるだけ伏せますが感想としてはリョナだこれ!!!って感じでした。
いや、リョナってなんやねんと思われるかもなのでふわっと説明すると「猟奇に美を見出した性癖」です。
詳細はググってもいいけど自己責任でね。

ドキュメンタリーにはじまり
淡い期待でできた青春を、
エンタメという暴力の大義名分で包んだら、
圧倒的熱量と理論で仕立てた道路に放り出して、
感情で車が壊れるまで轢かせ続ける分からせ系リョナ映画って感じ。

字だけ並べると何も分からないですね。
しかしそりゃあ予告ああなりますよ!と納得の内容です。
予告で全部説明してるタイプの映画です。
とっても親切ですね。

この映画に含まれている成分めちゃくちゃに多いですが、
それは1つのことを成り立たせるためだけに揃えられています。
おそらくなんですがメイドインアビスと同じ成分なんじゃないですかね。
田口清隆と青柳尊哉でお送りする実在版メイドインアビス
怖くないわけない。
田口監督はオーゼンだと思うんですがこの映画の中ではボ卿です。
メイドインアビス見たことある人はこれでだいたい分かるんじゃないでしょうか。
青柳さんはプルシュカですかね。
アビスはこの映画のテーマそのものじゃないでしょうか。

でも「この映画面白いから見て」とふりまくには難しいなと思ったので文章という形で出力してみることにしました。
「背景もきれいだし作画すごいしかわいいからメイドインアビス見て!」も勧めたあとの責任取れないですからね。
これからも劇場での公開予定がいくつかあるそうなので興味ある人は是非映画館へ行ってみてください。


流石に予告通りです!だけではなんやこれになってしますので、ちょっとだけ映画の内容に触れておきたいと思います。
予告にもある通り「ワークショップを経て課題映画を撮る。そこに参加する12人と監督」という内容の認識で正しいです。
基本的には2部構成になっていて前半はドキュメンタリー、後半は課題映画の撮影です。
前半のドキュメンタリーは人数こそ多いですが、大事なことがとても丁寧に説明されます。
ここでの内容も心にぐっさぐさに刺さる人もいるでしょう。
なぜここにいるのか、どんな人がどういう考えで何をしたいのか。

この映画の最後で問いかけられることもこの時点でしっかりと切り取られているので油断は禁物です。
個人を把握しておく必要はありますが、群像劇では定番の参加者同士の関係性はあまり汲まなくていいのは見やすさポイントだと思いました。

後半の課題映画はドキュメンタリー部分を見ていることでしか味わえないのがとても楽しいところです。
「あの演出されたこの部分はこうなったんだな」「あの人はこう考えて動いているんだな」など、
映画を見ている観客にも関わらず作り手になったような錯覚を覚えます。
課題映画のストーリーも謎が謎を呼ぶ展開なので受け身でそちらを追うとただの観客に戻っていくような不思議な感覚も味わえて面白いです。

この映画のキーワードは予告でも紹介されている「上位存在」そして作中で度々出てくる「理力」。
「上位存在」は映画の中で明らかになるので省略。
「理力」は序盤から登場し説明もされて一旦はなるほど、と思うのですがその説明こそが偽りで真実です。
どちらのキーワードも映画鑑賞後に改めて考えるといろいろ浮かんでくる不思議な単語です。

そしてより厄介なキーワードが「ワークショップ」。
タイトル通り「ワークショップ」を成立させるために「上位存在」「理力」というものが存在するのですが、
ワークショップに参加した12人は物語の終盤に向かうにつれ「ワークショップ」という単語に振り回されることになります。
「ワークショップ」は手段であり目的です。
そもそもこの「ワークショップ」が何なのかは前半のドキュメンタリーの最初に提示されていてそのための後半の課題映画なんですが、
回収方法が完全に暴力なので心臓が痛くなります。
ここでいう暴力は悪い意味ではなく成し得るために必要な暴力というやつです。
殴って血が出てとかではないので安心してください。
まぁいっぱい吐血するし血が出るくらいの事が安いぐらいのことになってますけど。

そしてその全てを熱量でカバーする力技。
これがないと映画としても成立しなかったやつです。
フードファイター監修致死量ドカ盛どんぶりに「うるせーーーーーーーーーーー!!!!お米大好き!!!!!!」と叫びながら
炊飯器ごとお米追加してタイムアタックさせるようなパッションがめらめら出てます。
まさに力こそパワー。
暴力を以ってして真正面からぶつかることでしか出会えないものとぶつかる覚悟が必要だと叱ってくれます。
叱られた気には勝手になってるだけかもしれません。
でもそこに立ち向かうことを本当に心から応援しているんだとも感じました。
そうでないとあのラストにはならないです。
身が融け落ちるほどの熱血。
血が煮えたぎってます。


以前の写真集の記事のおまけにつけたように
「自分にない引き出しを持ってる人がそれを選んでそれを良しとすること」には恐怖を覚えるタイプです。

青柳尊哉さん写真集「a Life」/写真集が苦手なのに写真集を買った話 - うめ茶漬けレモン砂糖漬け

12人のイカれたワークショップでもその恐怖感が存分に味わいました。
この映画見て一緒にイカれようぜ!などとの誘い文句はとても言えませんが、気軽に手を出して心に大やけどしてほしいと思います。
パンフレットは製作されていないのですが映画のラストからの情報量が圧倒的に足りない…!
映画のラストをメインに始まるロングインタビューやオーディオコメンタリーがめちゃくちゃ欲しくなるので
舞台挨拶やトークイベントなど立ち会えそうなら是非行った方がいいと思います…!!!